これが、その詩集か。一見、なんの変てつもない詩集にみえるが・・・ 私は、むしろこれより、さっきから桐島君が手にしているそのCDが気になっているんだが。 | |
桐島: | これですか? アグネスさんの新曲です。皆さんもうお聴きになりました? とっても素敵な曲ですよ。 |
松岡: | 最近の彼女の活躍は、同年代の我々にとって嬉しい限りだな・・・では、吉川君。早速、調査報告を頼む。 |
吉川: | はい。彼女・・・アグネス・チャンさんは、1979年頃を境にとても大人っぽく、美しくなったといわれています。彼女をいったい何がそうさせたのか? というのが、クライアントからの調査依頼です。 |
和田: | 79年のアグネスさんといえば、髪を切ってイメチェンしたり、ビキニ姿を雑誌で初公開したりしてファンを驚かせたっスよね。もー、ビキニなんて「コレもん」だったっスからねぇ!(両手で弧を描く) |
松岡: | おいおい、 それは失礼だぞ。「グラマーな」とか、「おっきい胸」とか、せめて「きょ」・・・い、いや、もういい・・・ったく、フォローに困る奴だ。女の子に嫌われるぞ。 |
伊達: | アグネスさんは、当時、大人の女性として「脱アイドル」について真剣に考えていたようです。でも、彼女の悩みはそれだけにとどまらなかったのです・・・ |
桐島: | えっ? それはいったいどんな悩みだったんですか? |
伊達: | 実は、アグネスさんは恋をしていたんです。そして、その事実は、この詩集に密かに託されてました・・・ |
松岡: | なるほど・・・恋する女性は美しくなるって言うからな。いずれにしても、彼女が「きょ」・・・いや失礼、女性として美しくなった謎についての調査が必要のようだな・・・吉川君。 |
吉川: | はい。じゃあ斉藤さん、ファイルNo.AC1979Xをお願いします! |
う~む。彼女がそんな詩集を出していたのか。いろんな著書があるとは聞いていたが・・・まさに揺れ動く23才の乙女心が託されているってことか。 | |
和田: | そーなんですよ!こんなふうに、ゆっさゆっさ、って・・・(両手を胸の前で上下に動かす) |
松岡: | わかったわかった・・・もういい! 彼女をそれ程までに揺さぶってしまった原因を、さらに調査する必要がありそうだな。それと、手紙も気になる要素のひとつだ。 |
伊達: | はい。それでは続けます。 |
深く深くすわりこむ | |
いなくなる いなくなる | 消えてゆく 消えてゆく |
あなたの腕の中に消える | あなたの腕の中に消える |
あなたの一部になる | あなたの一部になる |
海の見える公園 | |
あなたのとなりに坐りこむ | |
ずうっと坐っていよう | 空とぶつからないように |
誰にも教えない彼女の「ひ・み・つ」・・・か。究極の謎だな。彼女がまさかこんな詩を書いていたとは・・・この詩、取り方によっちゃ、抱きしめあってキッ・・・どころじゃなさそうだぞ。 | |
吉川: | チーフ。抱き・・・こほん。抱きしめあって、とまでは書かれていません・・・ |
伊達: | 詩というのは、その著者の主観そのものです。客観的評価は極めて難しいといわざるを得ません。それに、全てを読まずに、この2編だけで速攻判断するのは危険です。ただひとついえることは、この「ひ・み・つ」が、Ⅲ章のラスト、つまりクライマックスに配置されているということです。そして、手紙、童話・・・と展開します。 |
松岡: | ここしかないというポイントにある訳か。彼女の作家としての鋭いセンスには、改めて驚くばかりだな。 |
桐島: | チーフ。アグネスさんの謎を100%解明するのは、ご本人じゃないと出来そうにないですね。でも、いいことだけじゃなくて、当然つらくて思い出したくない事もあったでしょう・・・それは、人間誰しも同じですよね。 |
松岡: | そうだな・・・「ひ・み・つ」は文字どおり永遠の謎として、彼女の心の中にひそかに眠り続けるものなのかもしれんな・・・ |
伊達: | では、気を取り直して、次にいきましょう。 |
松岡: | 相変わらず醒めた奴・・・感動ってものはないのかねェ、恋でもしてみたらどーだ? |
伊達: | お気遣いありがとうございます。 |
松岡: | 長かったな・・・相当なこだわりようだ。 |
吉川: | ここでは、彼女の外見的美しさの変化について、かなり主観的な調査報告となってしまいましたね。 |
松岡: | 相当、筆が滑ってるぞ。まるで土屋圭市のコーナードリフトだ。このままコースアウトするんじゃないか? |
伊達: | 彼女の美しいビキニ姿への思い入れは、男性ファンにとって相当なものがあるようです。止むを得ないことかもしれません。 |
ところで、今、それに関する新たな調査依頼が入りました。「彼女のビキニは何種類かあるようですが、全て彼女のネームが入っています。彼女は既製品が合わないのでしょうか? それと黄緑のビキニは小さい写真しかないのは何故?」といった依頼です。 | |
松岡: | 謎が謎を呼ぶ・・・アグネスのビキニってとこだな。これも調査が必要だな・・・ |
和田: | お任せください。よしっ、片山っ、行くぞ! |
松岡: | こういう調査だけは元気だな、あいつ・・・ |
伊達: | ますますコースアウトしそうですので、そろそろ今回の調査のまとめに入ります。 |
「愛とは?」か・・・人類の壮大なる普遍的テーマに迫る結末だったな。科学で割り切ることができないからこそ、人生はドラマチックだといえるのかもしれないな。 | |
吉川: | アグネスさんの真剣な生き方と、ひたむきなその愛には、学ぶべきものが多いですね。 |
松岡: | そのひたむきさが、時として仇(あだ)となる・・・か。 |
伊達: | え?何ですか、今のは? 意味シン、いや・・・意味不明です・・・。 |
松岡: | まだまだ青いな。せいぜい愛の修行を積んでくれたまえ。 |
伊達: | お気遣い・・・ありがとうございます・・・。 |
<参考文献&資料> | 「不思議の国のアグネス」六興出版 「ハッピーアゲイン」二見書房 |
「みんな未来に生きるひと」 旬報社 「芸能人失格」立風書房 | |
「いつみても波瀾万丈」NTV 「週刊実話」「月刊明星」「月刊平凡」ほか | |
※ 著作権は著者ならびに出版社に帰属します。 |